マイナ保険証への一本化とその課題について。現状と将来の展望とは【後編】

ビジネス

2024年12月2日に現行の健康保険証が廃止され、「マイナ保険証」に一本化される予定です。

しかし、2024年4月時点でのマイナ保険証の利用率は6パーセント台と低調で、トラブルが多発しています。

以下では、マイナ保険証の導入に伴う問題点とその影響について、神奈川大学法学部の幸田雅治教授の見解を中心に解説します。

取得は任意のはずが、実質的な強制に

マイナンバーカードの取得は本来任意ですが、現行の保険証が廃止され、マイナ保険証に一本化されると、事実上の強制となります。これは任意取得の原則に反する行為であり、大きな問題があります。

2023年9月、河野デジタル相がマイナンバーカードへの一本化を発表しましたが、地方自治体への相談は一切ありませんでした。このような一方的な決定は地方自治の否定に等しいと言えます。

法律の根拠なき「原則義務化」

令和4年6月の閣議決定で、保険医療機関と保険薬局に対し「オンラインによる資格確認の導入」が義務化されました。

しかし、これに法的根拠がないため、大きな問題です。

省令(規則)で義務付けられているだけで、法律の裏付けを欠いています。

地域医療の担い手に対する影響

マイナ保険証への一本化は、地域医療を支える小さな「かかりつけ医」を廃業の危機に追い込んでいます。

特に地方の高齢医師が一人で運営している医院では、オンラインシステムへの対応が難しく、廃業に追い込まれるケースが増えています。

2023年3月に廃業した医院は全国で1103件あり、2024年末までにさらに約1000件が廃業を決めています。

これにより、無医村が増え、地域医療が崩壊する可能性があります。

高齢者施設が抱える不安

高齢者や障がい者施設では、マイナ保険証の管理が大きな問題となっています。

認知症の方が多く入居する施設では、現行の保険証を施設が預かって管理していますが、マイナ保険証になると「管理できない」と回答した施設が94%に達しています。

カードや暗証番号の紛失時の責任が重く、管理が困難であるためです。

政府への提言

幸田教授は、マイナ保険証への一本化が地域医療や高齢者に対する大きな負担となることを懸念しています。

現行の保険証を残すことで、これらの問題は解決できると指摘しています。

現行の保険証とマイナ保険証を併用することで、医療アクセスの確保とセキュリティの両立が可能です。

まとめ

マイナ保険証への一本化は、多くの課題を抱えています。

オンライン依存、災害時の対応、セキュリティリスク、医療現場の複雑化などが問題です。現行の問題点を総括し、次期カードに反映させることが求められます。

また、地域医療や患者への影響を最小限に抑えるためには、柔軟で現実的な解決策が必要です。

政府は国民の声に耳を傾け、最善の方法を検討すべきです。

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